平成14年度

第10回看護人間工学部会総会・研究発表会

平成14年8月31日(土) 北里大学薬学部1号館

10周年記念講演

心が通う身体的コミュニケーション技術

渡辺富夫教授(岡山県立大学情報工学部情報システム工学科)

頷きや身振りなどの身体的リズムの引き込みをメディアに導入することで、対話者相互の身体性が共有でき、一体感が実感できる「心が通う身体的コミュニケーションシステム E-COSMIC」の紹介とその基盤技術である身体的コミュニケーション技術の重要性を御講演いただきました。

教育講演

「小太りが長生き」を科学する-血圧と脈拍変動による体脂肪率の解析-

法橋尚宏助教授(神戸大学医学部保健学科小児・家族看護学)

運動負荷に対する適切な生体反応が起こるかどうかという視点で見ると、体脂肪が適正群と境界域の対象者が優れた反応であったという結果を、収縮期血圧値と脈拍数の変化率と総変化量において実験結果をもとに御講演いただきました。

一般演題1 座長 西田直子(京都府立医科大学医学部看護学科)

1.臥床者・看護者の負担を軽減するギャッジベッドのありかた

綿田明文、小川鑛一(東京電機大学理工学部)
大久保祐子(自治医科大学)、小長谷百絵(東京女子医科大学)

2.臨床における寝返りへの援助の実際

野崎真奈美、野呂影勇(早稲田大学人間科学研究科)

3.体位変換の違いが心拍変動に及ぼす影響

長坂猛、甲斐千恵、安部浩太郎、田中美智子(宮崎県立看護大学)

4.透析が糖尿病性腎症患者の下肢皮膚血流に及ぼす影響

川端京子、田中結華(大阪市立大学看護短期大学部)

一般演題2 座長 山田覚(高知女子大学看護学部)

5.使用しやすい坐剤形状に関する研究

岡村直子、小川鑛一(東京電機大学理工学部)
小長谷百絵(東京女子医科大学)
鮫島輝行、椿野美和(天藤製薬株式会社)

6.ペタリング運動時の筋疲労について

三田村将史(日本光電東京株式会社)
遠藤隆志(東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科)
高橋麗(千葉大学大学院教育学研究科)
小宮山伴与志(千葉大学教育学部)

7.拡張コンパートメントシステム適用電子カルテシステムとPERT

有賀正浩(東海大学電子情報学部情報科学科)


第11回システム連合大会

平成15年3月29日(土) 国立女性教育会館(ヌエック)

看護人間工学セッション
一般演題

1.身体特性からみた寝返り動作の分析

野呂真奈美、野呂影勇(早稲田大学人間科学研究科)

健常者寝返り動作と身体特性との関連を探ることを目的として、同意の得られた健康な成人14名(男性4名、女性10名、平均年齢34.2±17.3歳)に対して、従来の寝返り動作をビデオ分析した。<肩骨盤同時型><下肢先行型><上肢先行型>の3パターンに大別され、加齢とともに骨盤の回転を補助する動きがみられた。また、寝返りパターンと大転子間幅の間に弱い相関関係がみられ、大転子間幅が広い場合は、寝返りパターンが上体先行型になる傾向があった。しかし、重相関係数(R)が1,重決定係数(R2)が1であって、偏回帰係数が高かったのは性別(-4.7)、BMI(-3.89)、現在の運動歴(1.93)であった。

2.産褥早期における乳房緊満の変化に関する検討-サーモグラフィーによる乳房皮膚温の変化より-

及川美保(北里大学大学院看護学研究科)

産褥早期の授乳困難の主な原因の乳房緊満について、皮膚血流量を反映するとされる皮膚温の変化で客観的に検討した。正常経過の産褥早期褥婦で研究協力が得られた19人を対象とし、入院時から産褥5日目まで、朝夕授乳の前後に乳房皮膚温、乳房の可動性と乳房の緊満の状態を測定した。その結果、授乳前の皮膚温は産褥3日にかけて最も上昇し、乳房の可動性と有意な負の相関を認めた。授乳後は授乳前より乳房皮膚温が上昇し、乳房可動性と有意な相関が認められた。産褥早期の乳房緊満の変化は、プロラクチンとオキシトシンによる乳汁産生・分泌の生理的メカニズムに基づいていることが乳房皮膚温の変化から示された。

3.看護動作に関する研究-臀部挙上動作の分析-

玉之内健、小川鑛一(東京電機大学理工学研究科)、國澤尚子(埼玉県立大学看護学部)

本研究は、人が1日数回は必ず行う排泄行為を支援する看護動作である臀部挙上動作に着目し、臀部挙上時の臥床者の身体負担、看護者の身体負担と重心動揺を測定、定量化する。また、同時に両者の主観調査を実施する。本稿では、臀部挙上動作時の臀部挙上時間差(1秒と3秒)における実験を行った報告をする。その結果、看護者の身体負担、重心動揺面積および臥床者の身体負担は、挙上時間が長くなる(3秒)と身体負担が減少することがわかった。しかし、主観調査からは、挙上時間が短い(1秒)と持ち上げやすいとの結果を得た。これより、挙上時間に関してさらに厳密に調査を行う必要があると考える。

4.臥床者の起き上がり動作における補助用具の検討

鈴木玲子(埼玉県立大学看護学部)、小川鑛一(東京電気大学理工学部)

本研究は「モンキーポール(MP)」および「力綱」という2種類の補助用具に対し、利用者の負担という視点から設置位置を力学的に検討し、効果的な使用法の提案を目的とする。仰臥位から長座位への起き上がり動作において、モンキーポールおよび力綱につかまり補助した場合の垂直方向に加わる荷重および起座動作のしやすさをVASにて評価した。MPおよび力綱の設置位置は、利き手に近い場所で動作方向に引き寄せられる位置が扱いやすい傾向にある。また、力綱ではMPに比べて約1/2の力で済み、女性あるいは高齢者には有利な用具と考えられる。使用に際しては、利用する人の握力や上腕の屈腕力などにより、形状や素材選択などに工夫した使用が望まれる結論を得た。

5.分娩第Ⅰ期における「姿勢コントロール行動」と出産の達成感を予測する「姿勢コントロール行動」に対するセルフ・エフィカシー

鈴木享子(北里大学大学院看護研究科)

A. Banduraの社会的学習理論に基づき、主体的な姿勢コントロール行動を対処行動としてモデリングした初妊婦38名を産褥1日まで縦断的に追跡し、出産前から分娩Ⅰ期進行中の姿勢コントロール行動に対する各期のセルフ・エフィカシーを測定した。姿勢コントロール行動がアクティブに行われ、重回帰分析の結果、出産前のセルフ・エフィカシーは分娩開始後に全く影響していなかったが、分娩開始直後の時期にあらためて直接体験のモデリングによって知覚されたセルフ・エフィカシーが、分娩Ⅰ期移行期のセルフ・エフィカシーに強く影響し、出産後4側面からなる出産の達成感に影響していた。

6.注射器の片手操作に関する研究

國澤尚子(埼玉県立大学看護学部)

本稿では注射器を片手で操作する薬液の押し出し、吸い上げ時の注射器内圧を測定し、初学者と看護師の注射器操作技術を比較した。薬液の押し出し、吸い上げともに、同一注射器では注射針が細い方が内圧は大きく、所要時間は長かった。同一注射針では注射器が大きいときに同様の結果であった。また、いずれの場合も学生は注射器を何度か持ち替えており、把持が不安定であるため看護師に比べて力を効率的に加えられていないことがわかった。

7.妊娠経過に伴う不安心理指標(STAI)と唾液中ストレスホルモン

高橋真理、立岡弓子、竹鼻ゆかり(北里大学看護学部)

妊娠期のストレス関連ホルモンの推移に関する基礎資料を得る目的で、研究参加の同意が得られた合併症をもたない妊婦9名の、視床下部-脳下垂体-副腎皮質系のホルモンであるCortisolと、視床下部-交感神経-副腎髄質系のホルモンであるChromograninA(以下CgA)の濃度を唾液より採取し、妊娠初期より末期までの推移の測定と不安測定の心理指標尺度STAI from-Yとの関連を検討した。その結果、Cortisol濃度は、妊娠末期は初期、中期と比較して著しく増加し、CgAは著明な変化を呈しないことが示された。心理状態と両ホルモンとの関連を見ると、Cortisol は心理状態と関連ある可能性が傍証された。

8.DVTSによる看護学実習のリアルタイム双方通信と検証

小野保(岩手看護短期大学)

看護教育における遠隔教育では,顔貌,色彩,ケアの姿勢などの正確な表現が要求される.しかし,そのためには超高速ネットワークと高価な機器が必要となる.本研究では,DVTSを用いて高品質なリアルタイム双方向遠隔教育システムを構築し,既存の100Mbpsのネットワークでの利用可能性を検証した.その結果,100MbpsのLANにおいても,高画質のリアルタイム双方向通信による遠隔教育が可能であることが示された.

9.高齢者介護施設用を想定した機器開発手法に関する研究

塚田淳史(東京電機大学理工学部)

高齢化が社会問題となり,福祉機器の研究開発が盛んに行われるようになった.しかしながら,研究開発された福祉機器が介護施設や在宅等で浸透していない状況である.本研究では,特に高齢者介護施設における福祉機器の研究・開発において,入所者,ケアワーカ,施設運営者の生活及び介護の流れの状況をどう内包していくかが重要と考え,品質機能展開法を利用した福祉機器開発の手法モデルを提案した.本報告では,車いすを対象例として要求品質展開を行い,福祉機器(車いす)と利用者との関係の検証から,モデル妥当性の評価を行った.